省庁の頂点ともいえる財務省トップのセクハラ辞任に、とうとう日本の # Metoo 活動もここまできたかと一定の成果を実感している。
セクハラ問題が難しい3つの理由
このようなセクハラ問題が公になり、トップの首が飛ぶというイベントにつながったことは大きな成果ではあるものの、表に出るまでに被害者が受けた心労を思うと心が痛い。
なぜなら、セクハラはそれ自体が立派に悪であるにも関わらず、被害を訴え、その対価を加害者に払ってもらうことが3つの観点から非常に難しいからである。
- 自分自身がセクハラを受けることによるストレスで疲弊すること
- セクハラに対して抗議することが立場上難しい場合が多く、ジレンマがあること
- 周囲の理解を得るために大変な調整工数が必要であること
特に3に関しては想像を絶するほど大変であることをご認識いただきたい。
そもそも1,2でストレスマックスで弱っているところに加えて、上長に言うことで自分の評価が下がるかもしれないリスク、「気にするな」「気のせい」「かわいいから」などのクソリプを受けてさらに疲弊するリスクがある。
私自身の体験は下記の記事にて書いている。
セクハラはそれ自体でも自分自身の自尊心や女性性に対する嫌悪など、さまざまな自己卑下につながる要素をはらんでいる上に、問題を問題として立証し、相手に相応の対価を払ってもらうことは本当に大変なのだ。
自社の上長に相談しても取り扱ってもらえず、やむなく別会社に持ち込んだという経緯を目にした時に、「被害を伝え、その上で会社として動いてもらうことの困難」を想像できる人間がどれだけいるだろうか。
案の定、「なぜ自分もマスコミに努めているのに持ち込みにしたのか」「弁護士を通して訴訟すればいいではないか」などの「相変わらず」な反応がそこかしこに転がっている。
セクハラ問題クソリプ三銃士は2018年も元気に活動中。
上記のような背景や困難があるセクハラ問題だが、「そもそも被害を訴えることにもリスクがある」という点をすべてすっ飛ばしてクソリプを投げつける民があとを絶たない。
代表的なセクハラクソリプ三銃士は3パターン。
- 自由にコミュニケーションできなくなる!と騒ぐ言論統制信者
- 女性側の罠にはまったのでは!?というハニトラ信者
- 女も自分の性的魅力を利用してるじゃないか!という女は得だ信者
それぞれの特徴と代表的なコメントを紹介する。
1. 自由にコミュニケーションできなくなる!と騒ぐ言論統制信者
「なんでもセクハラと言われたらコミュニケーションが怖くなる」という『自由の制限』を危惧するのが特徴。「セクハラなんて大した問題ではないだろう」というスタンスでの男尊女卑発言が目立つ。
福田財務事務次官がセクハラ発言をしたというが、あの程度のことで公職を追われるというのは明らかに行きすぎだ。これで職を辞することになれば日本はますます言論の不自由な国になる。彼の発言に心底腹を立てている人は少ないと思う。安倍内閣倒閣のために怒っているようなふりをしているだけだ。 (田母神俊雄)@toshio_tamogami
「なんでもセクハラになる」と嘆くの男性ばっかりで、女性側から大してその意見を聞かないの、まじで「非対称性」って感じがする。
— ぱぴこ (@inucococo) 2018年4月19日
セクハラを危惧してコミュニケーションが取れないというのであれば、そもそも自分が今まで行ってきたコミュニケーションの種別を考えたほうがよい。
なのになぜ、自分の行動はまったく顧みずに「自分が心地よいコミュニケーションの形」を貫きとおそうとするのか。我々は謎を追ってアマゾンに旅立った。
2. 女性側の罠にはまったのでは!?というハニトラ信者
セクハラが女性の告発によって出てくると、セットのように湧いてくる「ハニートラップ」発言は、「男はハメられたのであり、女はもともと狙っていたんだ!」と責任転嫁するのが特徴。
財務次官にセクハラされたというテレ朝社員。精神的に大きなショックを受けたということだが、そんな男と1対1で1年間に数回も食事に行くかね。それって取材?取材なら事前に「録音します」と言ってレコーダーを出すだろう。
セクハラ発言をした次官はバカだが、一種のハニトラのようにも思える。(百田尚樹 @hyakutanaoki)
一つ確認ですが、今は戦時中ではないのでスパイ合戦はレアケースです。なぜ、このような超絶レアケースを危惧して、「セクハラがある」ということをかたくなに認めないのか、思考回路が謎である。
痴漢問題よりも痴漢冤罪を騒ぎ立てるのもこのタイプです。
「男には下心があり、女はそれを理解するべきだ」という趣旨の言説が目立ち、「男と1:1で何度も食事に行く=暗黙の合意」というう短絡的な思考を披露することが多い。
そもそも、仕事の関係のなかで「好意がある/ない」で態度や評価に差異を出してくるのであれば、それは相手側に問題があるのであって、半強制された側へ過剰に落ち度を求める姿勢には疑問しか残らない。
3. 女も自分の性的魅力を利用してるじゃないか!という女は得だ信者
「女は枕や性的魅力で得をしているのに都合が悪くなるとセクハラだと騒ぐ」と2よりさらに踏み込んで自業自得論にまで昇華させるのが特徴。
えらいさんのセクハラに援助交際とか本当にツイッター見るとあほくさすぎて言葉がないんよな。結局「枕営業的なもの」で得する女を処罰できないから、「あいつがやってて得してるなら自分も我慢しよう」と考える考える人間が必然的に出てくる。松尾匡の言う「疎外」そのものなんだよな。(テポドン東京@pannacottaso_v2)
非モテのルサンチマン…と切って捨ててしまいたいところだが、「女体だから」という理由で向けられる目線やそれによって発生する様々な事柄が「得だ」と本気で考えているか疑問である。
「女だって女を利用してうまいことやってたりする」って絶対この手の話しの時に出るのですが、それを利用してうまくやれる土壌があることを批判するべき。「女だってって利用してるくせに」と批判するの、論点が違う。イヤな男社会に最適化した形ってだけで、ダメな社会って話ですよ。
— ぱぴこ (@inucococo) 2018年4月19日
仕事を頑張ろうという場で望まない形で「女」を利用させられるシーンというのは、男性陣が考えるよりずっと多く、そしてそれ自体に居心地の悪さを感じながら「でもこれで得してるしな…」とそれをセクハラ認定できない女子がマジョリティである。
「女だから」セクハラされて、ゲタ履かされて、喜べるか。
1~3の論、全部まとめて燃やしたいが、いつも疑問なのが「女として見られて、仕事でもいい思いできるんだからいーじゃん」って考える人が本当に多いことだ。
「とりあえず、女の子出しとけ」という思惑は、当たり前に当人にも伝わるし、それにも傷つきはするわけです。その嬉しくない性差のパワーを「私はかわいい/若いから選ばれたのね♡」というように、プラスに捉える脳内お花畑の女はほぼいません(いないとは言ってない)
— ぱぴこ (@inucococo) 2018年4月19日
別に、美を売りにする仕事していない限り、それで勝負したいって思いが強いタイプなんて超レアキャラだ。
自分が「仕事」をしに来ているのに、求められるのが「女」だった場合の絶望感や失望感は想像を絶する。
クソリパー達が「得をしている!」と誹る「女」は、望まない扱いを受けないように仕事や身なりや距離感に人一倍気を使っている。
テンプレ的な「女の魅力を利用してなんでもうまくいく」といった世界は、現実にはほぼ存在していない。それ自体がファンタジーであることが、なぜわからないのか。
幻想の女を作ってクソリプするのをやめろ、現実を見ろ。
自分の稚拙なコミュニケーションや、内包した女性差別、立場があれば何をしてもいいという勘違いなどが生むセクハラ問題で、「言論の自由」「ハニトラ」「自己責任」など持ち出すのはお門違いだ。
幻想抱いてんじゃねーよ。お前らの稚拙なコミュニケーションを反省しないでなぜ「ある」という被害をないものとして扱おうとするんだ。
— ぱぴこ (@inucococo) 2018年4月19日
そもそもその対象が「女」という、まるで別の生物に対しての評価のように語ること自体がおかしい。男でも女でも、人に対して人権を侵害するようなことはあってはならないという、超!基本的な概念が抜け落ちている自分の低俗さを恥じて、せめて自分の偏った考えや態度を矯正する努力をしろ。
事実としてある問題に別の観点の問題を入れ込んで論点をズラすのではなく、この問題をとらえたうえで何を改善すればいいのかを考える程度には建設的なコメントが欲しいものだ。
# Metooが盛り上がるのは、押し殺されてきた、何者にされてきた感情と事実の噴出である。見て見ぬふりして、クソリプを投げつけて悦に浸るのはやめろ。
今回は以上です。
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