4℃の名前をあちこちで見かけるクリスマス前のインターネット。例によって私も呟いたのですが、皆さんの心の中の4℃が悲鳴を上げるのか、賛成・反対・よくわからん派を全てひっくるめての大論争で笑っています。
なぜか4℃のツイがちらほら流れてくるから「最近全然見てないけどどんなんだっけ」と公式HP飛んで「だっさ」と思ってブラウザ閉じた。
— ぱぴこ (@inucococo) December 21, 2016
とはいえ、別に持ってもいないし、贈られたこともない。
ぱっと見では好みでないものが多いけれど、シンプル王道なものもあり、呟いたように「だっさ」と思うものばかりではない。でも恋人が私に「君のために」といって4℃を贈ってきたら、お気持ちはありがたくいただくが、私の好みについてと、恋人の中の私像についての緊急会議を発議するだろう。
そんな、なにかモヤっとした気持ちが湧き上がってくる。
なぜ、縁もゆかりもないブランドに一家言あるのか?を考えてみた結果、4℃を見ていると、私の中のタラレバ娘がめちゃくちゃ女子会を始めて、逃げた呪いが追いかけてくるからだ、と結論がでた。
モテの要件「ちょっとダサい」を完全再現する4℃
4℃を擬人化したら、絶対にあざといタイプの女が出来上がる。
パステルピンクと白が好きで、髪の毛はセミロングの暗めブラウンで、前髪があって、ヒールは7cm以下だろう。
パンツスーツなんて着ないし、仕事もバリバリやってはいない。事務職か、なんならゆるい家事手伝いをしていて、当たり前に結婚して専業主婦になると信じている。それは「専業主婦になりたい!」なんて野望でもなんでもなく、当然そうなるという常識みたいなものである。だから、「将来の夢はマイホームをもつこと♡」「かわいいおばあちゃんになりたい♡」とか、何も考えずに言う。
イベントは押さえておきたいし、キラキラするものが大好き。クリスマスのイルミネーションは見に行くし、なんなら激混のクリスマスディズニーとかにも行く。ダッフィーとかすごく好きそう。
付き合って半年記念とか1年記念には2人の思い出のフォトメッセージとか作成するし、自分のチークの色が変わったことに気が付いてくれないと膨れそうだし、LINEの返信が遅くなったら悲しむし、スタンプはディズニーとかマイメロのを使っている。
絶対に男に「君は強いから大丈夫だよ」なんて言われないし、自分は庇護されるべき対象だと無邪気に信じているだろう。
たぶんそんな女である。
そんな、面倒だが、かわいい女である。
サエコさんに薫子さんがイライラするのと似ている。ドラマでは石原さとみが圧倒的かわいさの元で無双しまくってたけど、原作では「特別かわいいわけではない」がこれでもか!と強調されていた。
そんな4℃を見て私の中のタラレバ娘が悪口を言う
「別によく見たらかわいくなくない?メイクと雰囲気で誤魔化してるだけじゃん」
「パステルピンクを着て、斜め前髪でゆる巻きしておけばいいんでしょ?」
「でも結局さ、男ってあーゆー女すごい好きだよね」
「え~でもそんなことまでしてモテて楽しい?その男に好かれて嬉しい?」
「私そこまでできなーい(笑)てかもうこの歳でパステルピンクとか無理だし!」
「わかる~!別にそこまでしなくていいよね(笑)」
適当に台詞書いたけど、絶対にこの人たちこれ言ってると思う。
「そんな女にはなれない私」という邪魔な自意識
一番「モテる」のはこのタイプの女。わかるけどわかりたくないし別に憧れない。
そんなヘイトを集める要素を4℃は持っているのだ。アクセサリーの背景に壮大な「キャラクター像」を感じ取ってしまうのだ。
「そんなこと思ってないよ!誤解だよ~!」と私の中の擬人化4℃が言ってくる。が、こちらも勝手にやるので、そちらも勝手にどうぞ…と後ずさってしまう。怯える。
まことに勝手ながら「これを好きだと思えない自分」と「そんな自分が好き」と「しかしこの趣向は王道ではない」という裏ストーリーが私に襲い掛かってくる。遠い昔に乗り越えたはずの自意識を引っ張り出されるような気がしてモヤモヤし、私の心の中でタラレバ娘が喧々囂々の議論を始め出す。
だから4℃とその周辺の話題を見て、私は心を乱される。
「王道愛され」という呪いに終止符を
4℃は「王道愛されモテ」という概念の踏み絵と言えよう。
- 多くの人が持っており、万人ウケ、最大公約数を取れる「愛され」ブランド
- 流通量が多く、無難で安パイな「手頃」感のあるブランド
どちらで捉えるかで、このブランドへの評価は180度変わる。
なぜ「好み」だけで話が終わらないかというと、2を語る前に、1の圧倒的な力の前にひれ伏さざるをえないからだ。1を素直に教授する人間は2のような穿った見方をしないので、とても素直に「え~そんなことないよ~」と流されて終わりである。圧倒的敗北感。
当たり前だが、それは4℃が悪いわけではなく、4℃がそれを作り出しているわけでもなく、長年かけられてきた「こうでないとモテない」「こうでないと愛されない」という呪いの憑依先がたまたま4℃だっただけの話である。
この4℃にはいろいろなものが入る。ピンク、キラキラ、白いワンピース、ゆるふわの髪、学歴職歴が男より下、いつも笑顔、料理、家事……なんでもいいけど、そういったもの。 そういったものを盾にして「女はこうでなきゃ」と殴ってくるもの。
こーゆーもの。
呪いからはさっさと逃げて振り返るな
人の好みに定型文がないように、「愛される女」なんてものにも本来定型文なんてない。でも往々にして人は型にはめられた方が楽なので、求めてしまう。
そして、自分がその王道でないことを自覚していて、王道を否定しているわけでなく過ごしていても、「こうあるべき」と心無い形で殴りつけてくる人はいる。その時に、自分が合わないと感じる対象が「広く多くの人に愛されるもの」であればあるほど、自分の好みを信じるという単純なことが難しくなる。
人は相対化や周囲との協調を考えながら迎合したり反発したりして自分の好みをはっきりさせていくものだと思うので、あっちやこっちをウロウロしながら、迷ったり悩んだりして掴み取っていくものだと思う。
そんな幾度となく躓いた事柄がフラッシュバックしてくるような4℃論争でした。
ごめんね、4℃。あなたは悪くないの。
でも恋人よ、お願いだから4℃は贈ってこないで。
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逃げ恥は本当に多くの問題を重くならずにコミカルに、そして見事に描ききったなぁと感動する。この後に同じ枠で、タラレバ娘をやるのは完全に時代が巻き戻されていると思うのだがどうなんでしょうね。誰かを否定したり、過剰に年齢で切り取ったり、生き方を規定しないことを逃げ恥が描いてくれたが、タラレバ娘はその真逆で「33歳で」「未婚で」「女同士でつるむこと」について全力で「結婚できない女」のレッテルを張りにきているから真逆なんだよね。