エモの名は。

エモの墓場

資生堂・東急電鉄の広告炎上で見る「身だしなみ」の呪縛と女への攻撃

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資生堂のインテグレートが炎上したと思ったら、今度は東急電鉄が炎上していますね。ちょっと前はうなこが燃えて、代理店やクライアント企業はそんなに焼畑農場がしたいのだろうか?炎の力を吸収するタイプの魔者なのかな?と疑いたくなります。

 

車内化粧(マナーダンス)篇 30sec

 

とはいえ、日本のジェンダー意識の低さが次々に露呈しているということなので、通常運転ですよね。悲しい。さすがジェンダーギャップ111位の後進国

電通女子の過労死問題でも注目された「髪の毛がボサボサで女子力がない」というセクハラ叱責などを鑑みても、あまりにも日常的にハラスメントが存在しすぎていて、観念がゆるっゆるであることがCMを通して浮かび上がってきます。

「女である」という悩みが生成される社会はきつい

下記は当該女子のツイートの一部ですが、作る側の人間に蔓延しているのがこの意識であるならばさもありなんという気持ちになります。

私の仕事や名前には価値がないのに、若い女の子だから手伝ってもらえた仕事。聞いてもらえた悩み。許してもらえたミス。
程度の差はあれど、見返りを要求されるのは避けて通れないんだと知る。

男性上司から女子力がないだのなんだのと言われるの、笑いを取るためのいじりだとしても我慢の限界である。
おじさんが禿げても男子力がないと言われないのずるいよね。鬱だ〜。 

「性的に価値のある若い女」であることを求められ、それによって自分は認められるのだという欲圧が精神的にダメージを与えないわけないのですが、これらは「いじり」「コミュニケーション」というライトな表現に置き換えられ、不快感を表明すると「そんなことで」と黙殺されるなんてことは日常茶飯事です。

「おれのかんがえたさいこうのおんな」の呪縛と攻撃

インテグレートも東急も、結局のところこの「価値ある女とはこうだよ」というメッセージが強くて気持ちが悪い。こうしたコメントや視線が「ハラスメント」であるという認識の欠如が問題なわけですが、公に打たれる広告においてなぜGOサインを出されるか?と言えば決裁権をもつオジサンたちがGOを出すからです。

そしてなぜ「疲れを顔に出すこと」や「公共の場での化粧」がことさらマナーという名のもとに盛大に殴られるかというと、オジサンたちが望む「女らしさ」から逸脱しているからです。

彼らが認める、彼らの望む、あるべき「女らしさ」を体現していない、だからダメ。

そしてそれは逸脱であるから、広告という力を使って指摘したって構わない。

こうしたロジックが背景にある。それを見た女性たちからは当然不快感の声があがる。なぜ「義務」ではない化粧という行為一つをとって、槍玉にあげられなくてはならないのか?疲れひとつ出さず、笑顔でかわいくいなくてはいけないのか?そしてそれはどう業務と関係あるのか?

しかし、それを口に出せばまた「かわいくない」「そんなことで」「だからブスは」といういらない中傷に晒される点までワンセット。正直不快感と批判が上がるようになっただけでも進歩であるというのが今の日本の悲しい現状ではないでしょうか。

女が着飾るのは、異性のためだけじゃない

大前提として、別に化粧も身だしなみも「男性のためにあるわけではない」ということです。繰り返しになりますが、こうした問題が起こるたびにそこに映るのは「女の子はこうじゃなきゃね!」という男性視点からの押し付けです。「選ばれる女性はこうだよ」という圧倒的上から目線。自覚しているなら醜悪だし、無自覚なら馬鹿です。

オジサンが「女の子にはキレイにしていてほしい」と思うのは自由ですが、それを自分の周りや世間の女性に対して「そうでなければ女じゃない」「女として」と断罪する権利なんてありません。

そしてマナーの問題であるなら、それこそ「都会の女はみんなキレイだ。でも時々、みっともないんだ。」なんてコピーで「女として」という文脈を入れ込むのは無粋です。

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「かわいいのに」「きれいなのに」という余計なお世話

こうした抑圧だけでもお腹いっぱいですが、さらに余計なお世話があります。それが「かわいいんだから」「きれいなんだから」に続く「だから、オジサンがコミュニケーション取りたがってるんだよ(=だから喜ばしいことなんだよ)」という言葉。

  • 相手もあなたに興味があるってことだよ
  • かわいいから誘ってくるんだよ、よかったじゃん
  • ブスだったら誰もそんなこと言わないよ、キレイってことじゃん

男女ともに言う人はいますが、痴漢されて喜ぶ人間がいないように、相手の一方的ないじりというコミュニケーションを笑って受け入れて、それに対する不快感まで受け入れろという人。なにを言っているんだ?って話なんですが、めちゃくちゃいます。本当に余計なお世話だな。。。

そして周り周って結局のところ得するのはオジサンという構図。不快を振りまいても怒られずにいる。なぜなら「偉い人」のポジションにいるのはオジサンだから。

余談ですが、この手の話が出ると「手のひらで転がせばいいのよ♡」っていう女子が絶対沸くんですけど、個人が手段として活用するのはともかくとして、それを「賢い女子」「いい女像」として語るのは迷惑すぎるのでやめていただきたいですね。

ロールの押し付けと思い込みの排除は必須

結局のところ女への理想の押し付けは、そのまま男への抑圧にもなります。そして社会的なロールの固定化と押し付けはそのまま社会の中での生きづらさへと繋がります。

性差はもちろんあり、求める異性像は各個人の自由ですが、それを公共の場においてメッセージとして発信するかどうかは倫理の問題です。

自分自身がいわゆる大和撫子が好き、公共の場でメイクをする女性をみっともないと思う、そういった女性が嫌だと思うことと、その気持ちを正義であるかのように企業メッセージとして発信することには越えられない壁があるという当たり前のことに対してもっと意識的になるべきです。

そして、それは別に「女性をもっと優遇しろ!」「女の権利をもっと拡張しろ!」「メイクに金がかかってるから男はおごれ!」という話ではなく、押し付けられる「あるべき論」や最低限のボーダーを全体で下げる努力をしましょうよ、という提案です。

旧態依然とした「女らしさ」「女だから」も「男らしさ」「男だから」も、もう通用しない。 平成27年国勢調査 人口および人口増減率の推移(対象9年~平成27年)を見ると初の人口減少に転じてしまい、いよいよ少子高齢化まったなしで先細り感しかない日本において、戦後高度成長期の役割分担で回った時代はとっくに過ぎ去っているわけです。世代間や性別間の分断を煽っても、先細っているこの国がさらに消耗するだけで誰も得しないんですよね

オジサン各位に関しては、もう少し「女性」と言うものに対して虚像ではない姿を受け入れる努力をし、自分の中の押し付けと思い込みを下げていってほしいなと思います。

しっかし、ルミネ炎上からはじまり、各社は事例調査とかトレンド分析とかしてないのかな!?ってレベルなので単純にもうちょっとお勉強しましょうねって感じです。

 

サプリ 4巻 (FEEL COMICS)

サプリ 4巻 (FEEL COMICS)

 

 社会人女性の生きづらさはだいたいサプリに書いてあって怖いんだけど、藤井が「女の子の仕事」をさせられるとことかはまぁ象徴的だよね

 

 非常に「おっさん的」価値観を内包しているのがこの漫画かなと。定期的に炎上するのもわかるよね…ってなる。 

 男性中心社会の弊害と限界についてデータを元に時代背景を含め丁寧に解説している本です。ロールの固定化による弊害、つまり男性の労働時間の長時間化やそれを「支える」人材としての女性について非常にわかりやすく書いてあります。勉強になったよ。

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