エモの名は。

エモの墓場

年収700万円でそのブランド物買える?漫画とドラマの年収マジックを考える。

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Twitterで年収700万ドヤァ!な漫画の一コマがバズりました。

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年収700万!!!(ドヤァ)はインパクトがある

これは『そもそも恋は欲だらけ』という、石油王と結婚するのが夢だった女(27)と、巨乳・女体好きの男(29)が、双方「金」と「体(おっぱい)」というヨコシマな欲望目的で近づきながらも恋に落ちる様子を書いた婚活・恋活漫画です。

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絵がキレイでお約束設定ながら普通に面白いですが、同時期に玉の輿狙い上昇婚の決定版『ヤマトナデシコの再放送の設定などを見ると、いかに婚活における玉の輿の定義が低下したかの比較になっており、様々な側面から議論を呼びました。

 

 

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桜子さんの玉の輿本命が病院経営の御曹司東十条さん(年収8億)だったことを考えるとスケールが……

高収入と定義されるのが700万!?

石油王と結婚したい女が、年収700万(推定)の男に対して「なんでそんなに金もってんの!?」とテンションを上げる令和2年。

虎視眈々とお金持ちに狙いを絞って馬主、大学病院御曹司、その他を比較検討する桜子さん(平成12年)との差分が、そのまま20年かけた日本の貧しさにを表す気がして悲しみの嵐です。桜子さん、ハナからサラリーマンなんて狙ってないからな。そんなスケールの小さい女ならパイロットで手を打ちます。くしくも設定年齢は双方27歳で同じ年です。

桜子さんは年収と年商の違いもわかっている女なので言及は避けますが、バブル時代の3高の定義かつキリのいい4桁年収1000万ですらなく、出会える程度のリアルさがあり、しかしテンションがあがる「ちょうどいい高収入」として700万が取りあげられることと、その700万でできるこのギャップを強く感じました。

これはデータがないですが、ひと昔前ならここに出るのは「年収800万」だったような気がするのでここ数年で「存在する高収入」の年収が100万ほど下がった形になります。

平成のジェンダーと共働き結婚の一種の教科書の地位を築いた『逃げるは恥だが役に立つ』の主人公の一人の平匡さんの年収が700万であることも踏まえて「700万の価値を高く見積もりすぎでは!?」と私はザワザワしました。

 家賃15万、契約結婚に10万…を700万で???

逃げ恥を題材にした、結婚にまつわる経済の話を記載したのが下記の本です。ドラマ放映が2016年なので、次年度に出版されています。「婚活」という言葉を作り広めた白河桃子さんとエコノミストの是枝さんの共著です。

 本編は主にドラマ版『逃げ恥』を基準として、さまざまな結婚にまつわるお金の話を検証する、大変面白い本です。統計とドラマの情報を頼りに算出した平匡の年収や「契約結婚」でのメリット、専業主フ家庭を維持するためのボーダーライン年収など、多角的に分析されています。

金額算出の大きな前提になっているのが、ドラマ1話で提示された契約結婚をする際の金額提示の書類の数々です。家賃15万など基礎的な数値が確認できます。

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ドラマでの提示金額

それらの金額を元に、記載がなかった項目を総務省家計調査(2016)から取ってきて算出したのが以下の図です。

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ドラマからと不足分を総務省『家計調査(2016)』から試算した結果(本文P47)

本書の中のコラム内で平匡さんの年収を600万以上、700万と推定(仮定)し、この基準賃金から残業代を3000円程度と記載しています。漫画・ドラマでも平匡さんは残業があるように描かれており、残業代が支払われる前提を考えると「残業代を含んだすべての金額が自分の年収」的な感覚で生きていることは想像できます。

とはいえ、「家賃15万を払い、契約結婚で実質支出10万を支払うことを経済合理性の面から決断できる」年収としては700万はないだろうというのが個人的な感覚です。

基礎値が780万~830万、変動分によって900万~1000万が見える年収で独身であれば現実感がでるというのが私の見立てです。平匡さんの年齢が35歳エンジニア(大手勤務っぽい描写あり)と考えると、決して「ありえない」金額ではないでしょう。

お家賃15万円クオリティへの疑義と横浜での納得感

ドラマあるあると言ってしまえばそれまでなのですが、年収700万の独身男性が15万のお家賃でかつあのクオリティというのはおかしくないか!?というのは皆さんも思うところでしょう。

 ■ドラマあるある

金がない職種の人間がお家賃20万をくだらない美しい家に住んでいたり、28歳のMR女子がTASAKIのバランスを複数個買っている様

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分譲マンションっぽい外観

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カウンターキッチンかつ洗面から浴槽が広くて採光多くて明るい1LDK

まずはここが15万か!?という点で「嘘つけ!」と言いたくなる。が、職場が横浜ということで、それならば15万円も出したら結構いいところ住めるな~というのは合点承知の助!となりました。

東横線沿い横浜よりの駅は治安とお家賃のバランスが良くて、職場が横浜だったら…と思ったことは何度もあります。

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白楽徒歩10分、築5年、お家賃12.5万円のマンション。

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菊名だと渋谷がだいぶ近くはなります。

また根岸線も視野に入れれば、横浜駅前後には「山手・石川町」など横浜中華街及び外国人街で町が美しいが賃貸相場はそこまで高くない駅が続くので、私が横浜勤務だったならば完全にこの辺を見ます。

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路線図で、横浜駅前後の駅が候補に入る。

友人で横浜勤務、横浜住みの子が家賃7.5万でめっちゃ広いワンルームに住んでいたので、横浜勤務で給与ベースが東京と同一水準だと結構いい暮らしはできるよな、というのは実感としてあります。千代田化工建設とかに努めたい。

 家賃13万までならば700万でもいけなくはなさそうながら、やはり「月10万円を生活維持コストとして支払う」決断をできる余裕という点からは外れそう(それまでの生活と比較してメリットが大きいとはいえ)な点、またドラマでは家賃15万という数字が劇中でしっかり出ている点から考えると、平匡さんの年収700万説はやはり厳しそうという結論に至ります。

www.homes.co.jp

全体の間取りや平米数などを考察したこちらの記事は面白いです。

ドラマ版は漫画版に比べるとキラキラ度合いが高め

『逃げ恥にみる結婚の経済学』は主にドラマ版側をベンチマーク対象としている印象があります。これはドラマ中の方が数値が演出上でも効果的に使われている点や、実際の「暮らしぶり」をリアルに感じられることからかと思います。今回、読みながら漫画原作再度読み直しても確認しました。

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1LDKは一体型ではなく、廊下からの出入りが必要が独立型に見える(1巻)

漫画でも1LDK住まいではあるもののドラマ版ほどのキラキラ感はなく、1LDKだけど独立洗面がない一体型である点などに「男性の家選びっぽさ」が残っていて、リアルでした。

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洗面台もドラマ版と漫画版だと独立洗面台かどうかの違いがある(2巻)

ま、ドラマでこのリアルさを追求すると画面映えが悪いよねって話はもちろんあるんだけどさ。

百合ちゃんの推定年収が800万……だと?

逃げ恥におけるもう一人のヒロインともいえる、皆大好き百合ちゃんは50代の閉経高齢処女バリキャリなです。自虐っぽさは若干あるものの、自分の人生を自分で選んできたプライドもきちんとあり、原作でもドラマ版でも「自立した大人の女性」としての憧れを集めまくりました。

ドラマ版も石田ゆり子さんの「めちゃくちゃ若く見えるけど若作りじゃないとてもきれいな大人」感と相まって素敵すぎて気絶しました。

さて、そんな百合ちゃんは外資系の化粧品会社「ゴダールジャパン」の管理職として働いている設定です。

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書籍内で推定年収800万とされています。

漫画版では「室長」と呼ばれており、ドラマ版では最終話で部長になります。私が知る限りの大手外資系化粧品メーカー数社では役職名で呼ばず、多くの外資系企業と同様に名前(〇〇さん)で呼ぶ文化だったのでこの辺はちょっと「日本企業っぽさ」なり、リサーチ不足があるなぁと感じました。

もちろん化粧品会社もピンキリとはいえ、日本展開があることも鑑みる&ドラマ内での扱い的にはデパコスブランドっぽいので、年齢も鑑みると最低1200万くらいが妥当ラインでしょう。部長職級であれば1400〜万というところでしょうか。会社規模にもよるけどさー!そりゃ。

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この辺の求人がリアルなんじゃないかしら。

また、平匡の生活は「横浜周辺」であることでギリギリ想像できる範囲でしたが、百合ちゃんは横浜周辺住みではなくより都内に近い場所にいるようです。明確な場所は記載がないですが、以下のコマでの会話からもそれを感じられます。

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「百合ちゃんの家の近くで!?」という話などがでるため、もう少し賃料が高いエリアなのでは?

さらに、百合ちゃんは車持ち。家が賃貸か購入かは明示されていませんでしたが、住んでいる場所はマンションなので、どちらにせよ駐車場代が別途かかります。都内での駐車場代は4万前後なので、これだけでもガン!と固定費が上がります。

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ゆりちゃんは車持ち(2巻)

 うん、800万じゃ、全然無理だと思うの!!!

化粧品会社勤務のため、自社化粧品は格安or無料でもらえるなど美容費が下がる、所属するグループによってはブランド物購入も安くなる…などの副産物は想定されますが、年齢50代の管理職の推定年収が800万というのは、求人などと鑑みても乖離がある設定に見えます。


結論:統計数値を優先しすぎて、実態の暮らしとギャップがある

さて、いろいろ見てきましたが、「統計上の%を優先し、生活におけるリアルさから見る暮らしぶりの想定年収と乖離したのでは?」というのが私の結論です。

書籍の中で、年収600万円以上の未婚男性は20代・30代を合わせても11.8%だと記載しています。また、百合ちゃんの項目でも女性で年収800万以上は上位1%と記載しています。

私も少なからず同種の統計情報を見ているのでわかりますが、確かに統計上の「レア」度はわかります。しかし、だからといって「年収700万円の人ができる生活の質」が上がるわけではなく、手にしている金額で実行できる生活の上限値は決まっています(借金するなどの外れ値は無視)

また、『そもそも恋は欲だらけ』の29歳年収700万男性の身に着けているブランドものが、すべて「どこのブランドか」がわかる形ながら、記載金額が「セールがアウトレットで買ったのか?」という安さになっていたり、外資系化粧品会社管理職50代という人間の金額が推定800万円だったりするのは単なるリサーチ不足感が否めません。

アイテム金額は見たらわかるし、年収概算も求人票を見たらわかります。

平匡さんは確かにギリギリ700万でもいけるかな?と思わないでもないですが、やはり合理性を追求して「金で解決!」を選択できるメンタリティになるには若干額面金額が少ない印象です(めちゃくちゃ繰り返しになりますが)

 

 そんなわけで、統計上の数値はデータとして重要ながらも、その統計データでの「高収入」だけを基礎として論理展開してしまうと、やはり実感としての生活とギャップが生まれるし「そんな生活できないよね」につながるのではないかなと思います。無駄に長くなりましたが今回は以上です。

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